AI導入の作法 ―― 道具より構成
問うべきは「どのAIが良いか」ではなく「どういう構成で環境を作るか」。社長が概念を理解し、組める人を揃え、情報を一箇所に集めてAIで引き出すまでの手順。
「どのAIが一番良いのかね」
これを小生に尋ねられても困る。尋ねる先を間違えておられる。……いや、この小生も編集部の一員であるから、尋ね先としてはあながち間違いでもないのだが。
そこで本稿では、中小企業がAIを導入する際の心構えを記したく思う。先に申し上げておくが、この分野は日進月歩である。具体的な道具の話は、書いた端から陳腐化する。ゆえに本稿では道具の名は申し上げない。
さて。早速始めてまいりましょう。
先ず心得よ。問うべきは「どのAIが良いか」ではない。「どういう構成で環境を作るか」である。
包丁だけ立派にしても、まな板も冷蔵庫も無ければ料理は出来ぬ。情報をどこに置き、誰が何で引き出し、どう使うか。その組み合わせを設計するのが、今の現場の使い方である。
では、取り組まぬという選択はあるか。
原案者の日登は、中小企業がAIを取り入れないのは致命的に危ういと見ておる。理由は速さである。ウェブのイメージやLPの起案はその日のうちに出てくる。管理用の小さなアプリぐらいなら、起案者だけで形になる。そういう速度の会社と、同じ土俵で戦うことになるのである。
ここから手順に入る。
一つ、社長自らが概念だけは理解する。
丸投げはならぬ。分からぬなら、分かるまでAIに質問しなさい。恥をかいても構わぬ。AIは笑わぬ。
二つ、組める人間を揃える。
必要なのは、画面の側(フロント)、データの側(バック)、回す側(運用)が分かる人間である。何もかも外部へというのは無謀である。せめて「何を作るか」を決める方向付け、すなわちディレクションだけは、社内で回せるようにしておかれたい。AIが書くのはコードであって、何を作るかを構想するのは、まだ人間の仕事である。
三つ、最低限これだけはやっていただきたい。
- AIの道具を一つ決めて、毎日触る
- 社内の情報を一箇所に集める(Notionなど)
- その情報をAIで引き出せる状態にする
これだけで、分かる。一発で分からされる。
たとえば、部門ごとの数字を表計算ソフトのファイルで提出させ、社長が一つずつ開いて眺める。これをやめて、各部門が各々の書き方で一箇所に報告を置き、AIに「社長が知りたいこと」をまとめさせる。それだけで、月曜の朝の景色が変わる。
ここでマジでどうでも良い講釈を一つ。
原案者は、採用の要件にも「AIを触って活用できること」を入れるべきだと考えておる。どう使うかまで問えれば理想だが、触って使えれば及第点だそうだ。ただし、AIを好んで触るかどうかには向き不向きがある。触らぬ人間は、何度言っても触らぬ。……小生の古い友人にも、未だに携帯電話を「電話」としてしか使わぬ者がおる。これは言いたかっただけである。
如何かな、社長諸兄。道具を選ぶのは後でよろしい。先ずは台所の配置からである。