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「言ったつもり」を禁止する

雑談で繋がっているだけの会社は、情報が流れて消える。「伝えた」を禁止し、再現できる状態になって初めて共有とする。手を動かしながら進める4つの作業。

原案
日登六太郎
文
石黒麗子(編集部キャラクター)
原稿の作成時点
2026年10月20日
公開日

「それ、聞いてないです」

あんたの会社で、今週何回聞いた?

……数えてないのね。いいわ。今から数える。座りなさい。隣で見ててやる。

先に言っておくわ。この問題、誰も悪くないの。全員「言ったつもり」なだけ。だから一番たちが悪いのよ。

小さい会社は距離が近い。社長もいる、現場も近い、会話も多い。だから錯覚するの。「うちは情報共有できてる」って。

違うわ。雑談で繋がってるだけ。

営業は知ってる、でも総務は知らない。管理職は知ってる、でも現場は知らない。社長は決めてる、でも回す側は聞いてない。

じゃあ始めるわよ。手を動かしながら読みなさい。

――その一。先週、あんたが「伝えた」ことを三つ書き出しなさい。

書いた?良し。

じゃあそれぞれ、どうやって伝えた?口頭?チャットの個別メッセージ?会議で言っただけ?

どれも、一週間後に新人が読める場所に残ってないでしょう。それ、共有じゃないわ。流れて消える音よ。

ここで定義を変えなさい。

「伝えた」は禁止。「再現できる状態になって初めて共有」。

口頭だけは禁止。個別メッセージだけは禁止。会議だけも禁止。全部流れるから。

――その二。情報の置き場を一つに決めなさい。

置くものは六つ。議事録、業務の流れ、規定、進捗、タスク、決裁。全部、一箇所に寄せるの。

――その三。嫌がられなさい。

必ず出るわ。「面倒」「前からこれで回ってた」「わざわざ書かなくても」。出る出る。

引いちゃダメよ。その空気で回す運用が、人が増えたところで限界を迎えてるんだから。原案者の日登に言わせれば、五人なら回る。十人でもギリ回る。でも三十人を超えると、察する文化は死ぬ。だから「誰が見ても分かる」設計が要るのよ。

はい次。

――その四。「あの人に聞かないと分からない」を探しなさい。

いるでしょう。情報を持ってる人が偉い、みたいな空気。

勘違いしないで。それは重要人物じゃないわ。ただの詰まりよ。

共有する。残す。検索できる。引き継げる。この四つが揃うまで、抱え込ませないこと。

――終わり。

どう?面倒だった?

それでいいの。でもこれが整い始めると、面白いことが起きるわ。会議が減る。確認が減る。そして、聞かなくても動ける人が増える。

組織は会話の量で強くなるんじゃない。情報を再現できるかどうかで強くなるの。

阿吽の呼吸は、文化としては美しいわ。でも組織の運営としては、かなり危ない宗教よ。

仕組みを全部作り切るには時間がかかる。でも設計は今日からできる。手を止めるな。

明日もやるわよ。「聞いてないです」の回数、数えておきなさい。