「言ったつもり」を禁止する
雑談で繋がっているだけの会社は、情報が流れて消える。「伝えた」を禁止し、再現できる状態になって初めて共有とする。手を動かしながら進める4つの作業。
「それ、聞いてないです」
あんたの会社で、今週何回聞いた?
……数えてないのね。いいわ。今から数える。座りなさい。隣で見ててやる。
先に言っておくわ。この問題、誰も悪くないの。全員「言ったつもり」なだけ。だから一番たちが悪いのよ。
小さい会社は距離が近い。社長もいる、現場も近い、会話も多い。だから錯覚するの。「うちは情報共有できてる」って。
違うわ。雑談で繋がってるだけ。
営業は知ってる、でも総務は知らない。管理職は知ってる、でも現場は知らない。社長は決めてる、でも回す側は聞いてない。
じゃあ始めるわよ。手を動かしながら読みなさい。
――その一。先週、あんたが「伝えた」ことを三つ書き出しなさい。
書いた?良し。
じゃあそれぞれ、どうやって伝えた?口頭?チャットの個別メッセージ?会議で言っただけ?
どれも、一週間後に新人が読める場所に残ってないでしょう。それ、共有じゃないわ。流れて消える音よ。
ここで定義を変えなさい。
「伝えた」は禁止。「再現できる状態になって初めて共有」。
口頭だけは禁止。個別メッセージだけは禁止。会議だけも禁止。全部流れるから。
――その二。情報の置き場を一つに決めなさい。
置くものは六つ。議事録、業務の流れ、規定、進捗、タスク、決裁。全部、一箇所に寄せるの。
――その三。嫌がられなさい。
必ず出るわ。「面倒」「前からこれで回ってた」「わざわざ書かなくても」。出る出る。
引いちゃダメよ。その空気で回す運用が、人が増えたところで限界を迎えてるんだから。原案者の日登に言わせれば、五人なら回る。十人でもギリ回る。でも三十人を超えると、察する文化は死ぬ。だから「誰が見ても分かる」設計が要るのよ。
はい次。
――その四。「あの人に聞かないと分からない」を探しなさい。
いるでしょう。情報を持ってる人が偉い、みたいな空気。
勘違いしないで。それは重要人物じゃないわ。ただの詰まりよ。
共有する。残す。検索できる。引き継げる。この四つが揃うまで、抱え込ませないこと。
――終わり。
どう?面倒だった?
それでいいの。でもこれが整い始めると、面白いことが起きるわ。会議が減る。確認が減る。そして、聞かなくても動ける人が増える。
組織は会話の量で強くなるんじゃない。情報を再現できるかどうかで強くなるの。
阿吽の呼吸は、文化としては美しいわ。でも組織の運営としては、かなり危ない宗教よ。
仕組みを全部作り切るには時間がかかる。でも設計は今日からできる。手を止めるな。
明日もやるわよ。「聞いてないです」の回数、数えておきなさい。