採用の作法 ―― 弱い条件で勝とうとするなかれ
小さい会社ほど条件と裁量で勝たねばならない。採用コストを労働条件に回し、刺す相手を絞り、仕事の幅を成長の機会として設計する手順。
「うちは小さいから、条件が悪いのは仕方ない」
この一言ほど、中小企業の採用を駄目にしてきた言葉もそう無いだろう。
そこで本稿では、社長諸兄に向けて「採用」の在り方、その手順と心構えを、小生が記したく思う。
人事担当の諸君におかれましては、本稿をそっと社長の机に置いておかれたい。
さて。早速始めてまいりましょう。
先ず、よくある中小企業の求人を思い浮かべていただきたい。
年休105日。みなし残業。低賃金。
これで「人が来ない」と嘆いておられる。……そりゃあ来ない。小生でも行かぬ。
しかもこの話、ここから悪くなる。
人が来ないから広告費を積む。積んだ分の皺寄せは条件に行く。採用単価は上がり、離職率は高いまま、組織は疲弊する。そして、辞める。教える側も採る側も、すっかりうんざりしてしまう。
この構造、普通に破綻しておる。
では、何が間違っているのか。発想が逆なのである。
小さい会社ほど、条件で勝たねばならぬ。
大手にはブランドがある。安定がある。分業の体制がある。中小にはそれが無い。無い者が何で戦うか。答えは二つ。「条件」と「裁量」である。
ここから手順に入る。
一つ、採用コストを労働条件に回す。
広告費に消えていた金を、働く人間の方へ振り向けるのである。休日を増やす。残業をなくす。裁量を渡す。これだけで、一定の「刺さる層」は必ず来る。
二つ、全員にウケようとしない。
広く浅く取るのは大手の戦い方である。中小は「誰に刺すか」を先に決めねばならぬ。狭く、深く刺す。
ここでマジでどうでも良い講釈を一つ。
強者と同じ土俵で戦わず、戦う場所を絞って一点に力を集める。世に言うランチェスター戦略の弱者の戦い方になぞらえれば、そういうことである。……これは言いたかっただけである。
三つ、強みの見せ方を設計する。
中小の強みとは何か。仕事の幅が広いことである。
ただし、同じ事実が「何でもやらされる」とも「成長の機会が多い」とも読めてしまう。どちらとして伝わるかで、評価は真っ二つに分かれる。
後者に刺さるよう設計すればよろしい。そして設計した以上、その通りにしなさい。幅を成長の機会として組んだなら、それは「何となく何でもやる」とは別物である。ここを取り違えると、入った人間から順に辞めていく。
ところが今の多くの中小は、条件も弱い、設計も無い、狙う相手も曖昧。それで「採用がうまくいかぬ」と嘆いておられる。
うまくいかぬのは人材のせいではない。設計のせいである。
事業は人で出来ておる。採用は費用ではなく、投資の設計である。経営層がそう理解しない限り、勝負の舞台にすら立てぬ。
如何かな、社長諸兄。次の求人票は、広告の文言より先に、就業規則から書き直してみては。