「予算も分からないのに」を言わせるな
社長と現場の会話がすれ違うのは能力ではなく設計の問題。経営と現場の間に計画を組む人を置き、現場の声を入れた計画をチームで合意する手順。
今日は会議室よ。仮の会議だけど、あんたの会社でも先月あったはず。座りなさい。隣で見ててやる。
社長が現場に言ったわ。「来月の集客、何か施策を考えてきて」
現場が返すわ。「予算も分からないのに、施策を考えろと言われても無理です」
社長は苛立つ。「だから、いくらかけてどれだけ儲かるのかを聞いてるんだ」
待ちなさい。そこまで。
今の会話、成り立ってた?成り立ってないわよね。
どちらかが馬鹿なの?違うわ。同じ言葉を使って、違うものを見てるだけ。現場は作業を見てる。経営は金を見てる。
じゃあ、なぜすれ違うのか。
本来、実務をする人と、設計と計画をする人は分かれてるはずよ。でもこの会社では、その分業が崩れてる。だから実務の人に設計まで丸投げされる。
でも実務の人は、事業計画を作る訓練なんて受けてない。コストと売上を含めた話はできない。一方で経営は最初から金で考える。すれ違うのは当たり前よ。
原因は能力じゃないわ。設計ミスよ。
はい、やり直し。
――その一。間に「設計できる人」を置きなさい。
経営の視点が分かる。現場の実態も分かる。その間で計画を組める。そういう人よ。管理者って、本来そういう仕事なの。
――その二。計画はその人が作る。現場に作らせない。
ただし、現場の声は必ず組み込むこと。聞かずに作った計画は、絵に描いた餅よ。
――その三。計画はチームで合意する。
これを飛ばすとどうなるか。社長の一声で全部ひっくり返るの。現場は疲れる。組織は信用を失う。
違う、もっとよ。「合意した」ってのは、社長もその合意に縛られるってことよ。そこまで含めて合意なの。
はい、会議終了。
どう?会話が成り立つようになったでしょう。人を入れ替えたんじゃないわ。役割を分けただけ。
部署は人を分けるためにあるんじゃない。考えることと、責任を分けるためにあるの。
部署のない会社は自由に見えるわ。でも実態は、営業っぽい集団と事務っぽい集団がいるだけの、役割不明な集団になりやすい。
原案者の日登は、過去に関わった組織で着任して最初に手を付けたのが、このチーム作りだったそうよ。一番最初に。それだけここが土台ってこと。
明日の会議で、あんたが「何か考えてきて」と言いそうになったら。待ちなさい。誰が計画を作るのか、先に決めなさい。黙ってなさい。