その残業は、誰のためにある?
頑張る人は、会社の構造の問題を隠してしまう。「頑張っている」を評価するのをやめ、引き継げるか・手順にできるかを問う組織への切り替え方。
「頑張っている人間から壊れていく」
意味が分からないだろう?大丈夫だ、分かるようになる。
ところで君、あの席の明かりは何だね?
夜の九時だ。毎日あの席だけが点いている。色んな仕事を引き受け、誰かの尻拭いをし、揉め事があれば飛んでいく。君は彼を「良い社員だ」と思っているだろう。
普通に見れば、そうだ。だが組織を設計する側から見れば、あれは穴だ。穴を人間で塞いでいる。
仕組みが無い。役割が曖昧だ。責任の分担が無い。すると仕事は、優しい人間、責任感のある人間、断れない人間の所へ吸い込まれていく。本人も最初は使命感で動く。「自分がやらなきゃ」と。
問題はその先だ。それが続くと、会社はその異常を正常だと覚えてしまう。
本来二人要る仕事を、頑張る一人で回せてしまう。本来設計すべき仕事を、根性で突破できてしまう。だから、直らない。
つまり君。頑張る人間は、会社の構造の問題を隠してしまうのだ。
そして残酷なのはここからだ。彼が限界を迎えた日、「あの人にしか分からない」が始まる。属人化の完成である。
今より嗜みを教えてしんぜよう。
「頑張っている」を評価するのをやめたまえ。代わりに、こう問うのだ。
・その仕事は、他の人間でも回るか
・引き継げるか
・手順に書き起こせるか
・役割を分けられるか
評価するのは、こちらだ。
管理職にも伝えたまえ。忙しさを成果にするな。残業時間を誇るな。火消しを褒めるな。見るべきは、火事を減らしたかどうかだ。
当然、反発はある。「私はこんなにやっている」「助けているのに」「現場を知らないくせに」。
分かる。実際、彼らは助けているのだ。だが組織の側から見れば、その善意が延命措置になっている。本来なら壊れて、作り直されるべき構造を、人間が支えてしまっているのだ。
面倒臭いか?そうだ、面倒臭いのだ。だから良い。
頑張る人間を褒めるのは簡単だ。彼がいなくても回る仕組みを作るのは、面倒だ。その面倒を引き受けるのが、経営というものだ。
中小企業では、頑張る人間が会社を支えているように見える。だが本当に組織を前へ進めるのは、頑張らなくても回る構造を作った人間だ。
会社は根性で保つものではない。再現できることで保つものだ。
どうだ?
君はまだ、あの席の明かりを「忠誠心」と呼ぶかね?